<写真展「1978」に寄せて>
人には憶えている何百億倍もの記憶が眠っているそうです。
無情なまでに通りすぎていく日々の中でさえ、
圧倒的な透明さで腑に落ちたり
どうしようもなく胸がざわついてしまったり
離したくないと強く願ってしまったりするのは
どうやらわたし自身も知らない(憶えていない)
降り積もった記憶たちの仕業のようです。
これまで出会った無数の風景も、声も、感情も、
思い出すことがなくても振り返ることがなくても
それはわたしの中で確かに息づいていて、
だから、
どれほど時間が流れても
どんなに遠くに離れてしまっても
今を今として
愛したり悲しんだり惜しんだりしながら
怖がらずに歩き出せるんだと思います。
栗原 葉子